「治療の副作用で脱毛します」と言われたら?
はじめまして。
臨床化粧療法士®︎の竹内彩子です。
みなさんは、ある日突然、病気の治療による副作用で「脱毛します」と言われたらどうしますか?
もしくは大切な家族がそうなったら、どう声をかけて、何をしてあげますか?
今回は、一看護師であり、一患者当事者としての私の経験から、「脱毛」についてまとめてゆきたいと思います。
ある日突然「脱毛します」と言われたら
脱毛に悩む人の現状
脱毛は、アピアランスケアに関わる大きな問題です。
化学療法の副作用の苦痛度ランキングでも、男女共に上位を占めている現状があります。
しかし、苦痛が強いとデータで出ているにも関わらず、それを相談できる窓口は少ないのも現状です。
突然病が発覚し、気持ちの整理もつかぬまま治療に突入する方もおられると思います。
生きるためと言い聞かせながら、髪が眉毛が睫毛がはらはらと落ちるように抜けていく。
もしくは脱毛症のように、原因も分からずどんどん抜けていき、気づくと地肌が見えている。
どんな気持ちで生きていくことになるのでしょうか。
なぜ体毛が抜けるのか
そもそもなぜ、体毛が脱けていくのでしょう。
全ての毛は、
毛が伸びる「成長期」→2〜6年
毛が抜ける「退行期」→3週間
お休みの期間の「休止期」→3〜4ヶ月
を繰り返しています。
脱毛の原因となるのは、化学療法や放射線治療だけでなく、自己免疫疾患や内分泌疾患、加齢やホルモンバランスの影響、身体的ストレス、精神的ストレス、外傷など多岐に渡ります。
円形脱毛症だけでも、患者さんは200万人にのぼると言われています。
がん化学療法では、活発に増殖する細胞に作用するため、成長期毛は傷害を受けやすく、また頭髪の90%以上は成長期毛であるため、ほとんどが脱落し、脱毛します。
脱毛は、おおよそ化学療法開始1〜3週間後に生じます。
通常脱毛は一過性であり、化学療法終了後3〜6ヶ月後には毛髪の再発毛がみられます。
脱毛へ向けて備えるもの
①ウィッグや帽子について
では、実際に抜けてきたとき、抜けると言われたとき、どうしたらいいのでしょうか。
一般的には、ウィッグや帽子の用意が必要かと思います。
不安や恐怖、選択と決断の連続の中、
日常的にウィッグを使用されるのであれば、1〜2つ用意があると良いでしょう。
外出用に1つ、近所に出掛ける時や宅配受け取りの際などにさっと被れる帽子タイプのもの1つなど、また、外出用に2つほど用意し、洗い替えとして使うなど、生活に合わせて準備されると良いかと思います。
ご自宅で過ごす時の帽子は、ケア帽子が2〜3枚あると安心です。
髪がないと皮脂の匂いが気になったりするので、洗い替え用に数枚あると便利です。
ぴったりしているものより、ゆったりしているものの方が、被りやすく、圧迫感がなく、髪がないという感じが和らぎます。
外出時は向かい風で生え際が気になったりするので、外出頻度の高い方や自転車に乗られる方は、ウィッグの上から被れる帽子が1つあると安心かと思います。
帽子のみで乗り切れる方もいらっしゃるでしょう。
ウィッグはあくまで選択肢として、スカーフや帽子など、がんサバイバーの方が作っているケア帽子のブランドなどもあります。
非日常のものを日常に取り込んでいくのは、心に大きな負荷がかかります。
周囲の方にどこまで伝えるかによっても、必要な物は変わってくるかもしれません。
ご自身の生活や関わる人をイメージして、少しでも顔を上げて選べたら良いですね。
ウィッグは、昨今は良心的な価格でも上質なものが多いです。
もちろん高価なものは相応の良さがあると思いますが、闘病される方は治療費が必要なこと、被っている間の気持ちの変化や発毛状況によって、追加で購入するかもしれないことなどを考えると、ストレスなく購入できる価格の物の方が、不本意な気持ちが和らぐかと思います。
人毛にこだわる方もおられるかと思いますが、人毛は自然であるがゆえ、劣化も早かったりします。
人工毛でも人毛と遜色ないものがたくさん出ています。
髪質、髪型、価格を含め、被ったときの納得感が大切かと思います。
②アピアランスケア支援事業
がん治療を受けられる方であれば、治療の副作用に対するアピアランスケア支援事業として、都道府県や市区町村よりウィッグ購入に対して助成金が降りる場合があります。
ウィッグを購入された時、必ず領収書をもらってください。申請の際必要になります。
「お住まいの都道府県、がん患者のアピアランスケア支援事業」で検索してみてください。
大切な家族が脱毛すると分かったとき
大切な家族が脱毛に悩まされているとき、どう触れて良いのか、何と声をかけたら良いのでしょう。
そばで見守る家族や友人もまた、混乱の中にいます。
どうしてほしいか聞いてあげてください。
正解はその人の心にしかないかもしれません。
髪が抜けてもあなたはあなたと一緒に信じてあげてください。
『大丈夫、髪は戻るよ。』
分かってます。
髪の毛くらい我慢しないといけないと思っています。
「でも、(つらい)」
「でも、(悲しい)」
その先に寄り添ってもらえたら。
“戻るという事実”ではなく、
“つらいという気持ち”に寄り添ってほしいと思います。
まとめ
自分の変化をそうは無い経験とポジティブに受け止め、ウィッグ生活を楽しまれる方もいれば、鏡も見たくない方も、人と会いたくなくなる方もおられるでしょう。
女性はウィッグやメイクで凌げても、男性はウィッグもメイクもハードルが違ってくるかと思います。
病(脱毛)を伏せて治療しながら仕事や子育てをされる方、病は公表しているけどウィッグは気づかれたくない方、毎日満員電車に乗る方、自転車で走り回る方、大切な家族やパートナーには何としても見せたくない方など、脱毛というアピアランスの変化は、生活の様々な場面に大きな壁となって立ちはだかり、心に傷を残します。
私も一患者当事者として、約1年間、不本意なウィッグ生活を送ってきました。
どこに居ても、誰と居ても髪の毛が羨ましく見えていました。
ウィッグで生きる息苦しさを知るとともに、治療前と変わらない生活を送れたのは、やはりウィッグがあったからだと心から思います。
この記事を読んでくださった方が、本当に必要なものを少しでも納得して手にとることができますように。
こちらのサイトに寄稿された「医療用ウィッグ」に関する他の記事も併せて、ご参考になれば幸いです。
https://apilabo.jp/tag/medical_wig/
最後までお読みいただきありがとうございました。
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