臨床化粧療法士®が提供する「アピラボあおぞら」と人生の節目-成人式
こんにちは。臨床化粧療法士®の菊池恵未です。
私は、臨床化粧療法士®の活動として、東京都豊島区の障害者福祉施設で「アピラボあおぞら」を定期的に開催しています。
今回は、その中でのエピソードをご紹介したいと思います。
アピラボあおぞらとは?
「日常生活を、美しさとともに」
アピラボあおぞらは、令和2年のコロナ禍から少しずつ規模を大きくして取り組んできたプログラムです。
障がいがあってお化粧のやり方がわからない
という方や、
生活が苦しくて美容室に行く機会がない
という方のために、協会から美容師さんを派遣していただいたり、私自身が講師としてお化粧の機会を作ったりと、利用者のみなさまと一緒に「美容が身近なものになるように」少しずつ機会を設けてきました。
令和5年度は補助金を取得して、美容師の守屋怜さんと一緒に1年間のプログラムとして実施しました。
「お金がかからないなら、行きたい。」
施設には髪の長い方、逆にいつも坊主頭の方がいらっしゃいます。
美容室に行く機会は年に1回あるかないか、ご自身で散髪している方もいます。
アピラボあおぞらでは、1年間で12名程度、ヘアカットとヘアカラーの機会を提供させていただきました。
お誘いすると、ほとんどの方が
「お金がかからないなら、行きたい。」
とおっしゃいます。
みなさんが美容と離れたところにいるのは、障害が理由だけではありません。
生活困窮の課題も大きいのです。
アピラボをきっかけに周囲が気付いたこと
成人式に行くか、迷い中のAさん
Aさんは20歳の学生さんです。
障害福祉サービスを利用しながら、1人で暮らしています。
指摘があれば散髪には行きますが、おしゃれにはちょっと無頓着。
ひげを剃るのもめんどうで、髪の毛もひげも伸び放題になっていました。
アピラボのことは、支援員からの知らせで知ったそうです。
5月から始まったアピラボで、何人かが髪を切っていたのを見た支援員が、「ちょうどいいかな。」と思って勧めたそう。
Aさんがアピラボで髪を切ったのは11月のことでした。
Aさんが髪を切ったことを知った支援員がふと言いました。
「今年成人式じゃない?」
20歳という年齢は、施設の中でとてもお若く、11月になるまで支援員も成人式のことを意識していませんでした。
Aさんは「ああ、はい。」という反応でしたが、「せっかく髪を切ってかっこよくなったんだから、行ってきたらいいんじゃないかな。」という声が自然と起こりました。
Aさんは最初は迷っていましたが、成人式前にはスーツを用意して、わくわくした様子に変わりました。
そして、成人の日の次の週、「いってきました。」と成人式の写真を見せてくださいました。
そこにはピースをして写るAさんの姿が。
見た目の変化が、周囲を動かした
このエピソードでは、当初「ちょうどいい機会だから、髪を切ろうかな。」というアピラボへの参加から、ご本人の変化を見た支援員が「せっかくだから、成人式に行ってきて欲しい。」と思ったことによって、成人式への参加がかないました。
アピラボは、見た目に少しの変化をもたらすだけですが、ひとつのきっかけで一生の思い出になる出来事にもつながるということを感じました。
おわりに
「日常生活を、美しさとともに」
そんなスローガンを掲げてスタートしたアピラボあおぞらですが、些細な変化や一度の機会でも、見える景色が変わるかもしれません。
これからも、小さな変化を楽しめるように、みなさんに寄り添っていけたらと考えています。
資格講座の申し込み
「臨床化粧療法士®」になる為の資格講座やワークショップを随時開催しています。お化粧のちからで、より多くの方がいきいきと自分らしく活動できる社会を目指します。
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