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クレンジングの仕組みを徹底解説!界面活性剤の役割と選び方

みなさん、こんにちは、臨床化粧療法士®︎の松村万由です。

 

普段は、歯科医師として働いていますが、福岡赤十字病院での勤務経験から、病気や治療によって生じる外見の変化がもたらす社会的な影響に興味をもち、2024年にこの資格を取得しました。

 

この資格を取得し、もう一つ気づいたのは、自分の【外見】もしくは【整容】というのは、毎日切っても切れないもので、自分と顔が似た人はいても、肌質もメイクも髪型も服装も全く同じ人はいないように、外見や整容はその人自身の個性の輪郭のようなものだと思います。

 

今回のコラムでは、メイクをする方にとっては必要なクレンジングをテーマにしました。

 

よくスキンケアについて聞かれることがあるのですが、その際に、私が必ず確認することは、

 

クレンジングは何をどのように使っていますか?

ということ。

 

スキンケアの中でも、クレンジングは肌から油性成分が原料であるメイクを浮かせて洗い流す作業で、肌への負担も大きいです。

 

だからこそ、なんとなく選ぶのではなくて、クレンジングの原理や成分、そして何よりご自身の肌質やメイクの濃さなどを基準にクレンジングやスキンケアを見直すきっかっけになればなと思います。

 

ぜひ、ご覧頂ければ幸いです。

 

クレンジングの目的とは

クレンジングは、油性成分であるメイクや日中に肌に付着する汚れ(皮脂、汗、ほこりなど)を油と水が混ざり合う性質を利用して、汚れを包み取り、優しく洗い流すことを目的とします。

 

適切なクレンジングは、肌のバリア機能を守りつつ、毛穴の詰まりを防ぎ、後のスキンケアの浸透を助けます。

特に現代の肌は外気汚染や化粧品成分の複合的な汚れにさらされやすく、その日の内にクレンジングで汚れを落とすことが健やかな肌を継続するためにとても重要です。

 

クレンジングの構成成分

油と水が混ざり合う性質を持つクレンジングの構成成分としては、油性成分、水溶性成分がメインですが、ここに加えて、油と水を繋ぐための「界面活性剤」が含まれています。

 

界面活性剤とは、本来混ざり合わない物質同士の境界に働きかけ、二つを混ぜることが出来る物質です。

 

その構造は、一つの分子内に油になじみやすい(親油基)と水になじみやすい(親水基)の両方を持ちます。

この構造によって、目的でも示したように肌からメイクの汚れを包み取り、水でその汚れを洗い流すことが出来ます。

 

クレンジング剤の種類

クレンジング剤の種類は、油(オイル)ベースと水(リキッド)ベースの二つに大きく分類されます。

 

油(オイル)ベース

クレンジングオイル、バーム、(油系)ジェル、クリーム、ミルクなどの5種類が代表的なものとして挙げられ、油性成分の配合量に違いがあります。

洗浄力も、クレンジングオイルやバームが最も高く、メイクとのなじみもよく洗浄力が高いという特徴があります。

 

しかし、洗浄力が高いため、肌のバリア機能である皮脂膜、NMF(天然保湿因子)や細胞間脂質も流れ出てしまう可能性もあるため濃いメイクでなければ、油性成分の配合割合が低いミルクタイプをお勧めします。

 

水(リキッド)ベース

(水系)ジェル、液状、拭き取りタイプなどの3つが挙げられます。

オイルベースと比較すると、さっぱりとした洗い上がりですが、オイルベースタイプよりも、人間の体に備わっている天然の肌バリア機能の構成因子は流出しにくいです。

 

しかし、拭き取りタイプは肌との摩擦力が生じるため、伸びの良いテクスチャーのものをお勧めします。

 

 

クレンジングの原理・乳化と転送

 

なぜ、クレンジングでメイクが落ちるのか?

 

まず、油ベースのクレンジング剤は、メイクの油となじみやすいのが特徴で、肌の上でクルクルと馴染ませると、クレンジング剤に含まれている油分と水分が混ざり合い白く濁ってきます。

 

この現象を「乳化」と言います。

 

乳化とは、油性の成分と水性の成分を一時的に混ぜ合わせ、細かな粒子に分散させて汚れを水で流しやすくする現象です。

 

油性成分を多く含むクレンジング剤では、この乳化がメイクを落とすメインの工程です。

 

乳化させた後に、水で洗い流すと、クレンジング剤に含まれる界面活性剤の「転相」によって肌からメイク成分が流れていきます。

 

転相とは、界面活性剤の力で、W/O(親油基が外側で親水基が内側)からO/W(親油基が内側で親水基が外側)へ変化することや、またその逆に変化することを言います。

 

つまり、油性成分が多く含まれるクレンジング剤はメイク成分を乳化させ、界面活性剤の転相により汚れを水で洗い流して、メイク汚れを落とすという仕組みです。

 

一方、水性クレンジングには、ほとんど油性成分は含まれていないため、メイク成分を落とす主役は界面活性剤による「転相」がメインです。

 

では、オイルベースとリキッドベースのどちらがいいのかということですが、はっきりとした万人にマッチした正解はないというのが正直なところです。

 

なぜなら、個々の肌質は簡単に分類できるものではありませんし、肌管理の仕方や食事や環境などの生活習慣、さらには、このような自分自身の美容や整容に関わる事柄に対しての興味の深さによっても大きく変わってくるからです。

 

以上のことから、クレンジング選びで最も大事なのは、なんとなくクレンジングを選んでなんとなく使用するところからの脱却だと思いますので、次にもっと細かい内容を説明します。

 

クレンジング選びのポイント

クレンジングは「落とす力」と「肌を守る力」のバランスが問われます。

 

強い洗浄力だけを追求すると必要な皮脂まで取り去り、乾燥やつっぱりの原因になる一方、低刺激すぎるものはメイクが残り刺激になることがあります。

 

自分の肌質に合わせ、使い方のコツを守ることで、朝の化粧ノリと肌の健やかさを両立できます。

 

クレンジングは、好きなテクスチャーや使用感もあると思いますが、ご自身のメイクの濃さで選ぶことを勧めます。

 

必要以上に洗浄力が強いクレンジングの使用を続けると、元来、肌に備わっているバリア機能を担う因子が流れてしまうため、乾燥や肌荒れの原因になる可能性があります。

 

テクスチャーの観点では、クレンジングを手に取り、肌の上で滑らせていく際に、肌に摩擦や余計な力が加わらないためにも、伸びがいいものをお勧めします。

 

次に、クレンジングの肌質別に選ぶポイントを説明します。

 

乾燥肌・敏感肌向け

低刺激で保湿成分が豊富なミルクタイプやオイルタイプを選ぶと良いです。界面活性剤の刺激を控え、セラミドやヒアルロン酸、グリセリンなどの保湿成分が含まれているものを優先します。香料や着色料は避け、アルコールフリーの表記も確認しましょう。優しくマイルドにクレンジングすることで、肌のバリア機能の低下を抑えられます。

 

混合肌・脂性肌向け

洗浄力と保湿のバランスが取れたジェルタイプやミルクタイプ、またはオイル系のクレンジングが適しています。メイクの濃さや皮脂の分泌量に応じて、オイルの配合量がやや多めのものを選ぶと、余分な皮脂を浮かせて落としやすくなります。

 

敏感肌・アレルギー体質向け

無香料・無着色・アルコールフリー、刺激が少ないもので、添加物の少ない純粋なクレンジングオイルやミルク、オイルインの低刺激タイプが適しています。初回は少量でパッチテストを行い、肌へ反応が出ないことを確認してから本格的に使用することを勧めます。

 

これ以外の特に肌質に偏りがない場合は、好みのテクスチャーや洗い上がりの感じなどの好みによって選択されていいかと思いますが、先ほども述べたように、メイクの濃さがそこまでなければ、人間が持ち合わせる肌のバリア機能までが流出しないように洗浄力がそこまで高くないミルクタイプや(水系)ジェルタイプをお勧めします。

 

皮膚トラブルとスキンケアの関係性についてはこちらの記事もご参照ください♪

【解説】やはり皮膚トラブルにはスキンケアが密に関係していた!

 

理想的なクレンジング方法

 

 

クレンジングの手順のポイント

クレンジングは、肌からメイク成分やその日に付着した汚れを絡ませて落として洗い流すという、肌にとっても最も負担が大きいスキンケアです。

そのため、なるべく肌をこすらず、メイクを浮き上がらせるように落とすことがとても大事です。

その手順のポイントを説明します。

 

  • クレンジングの適量で負荷や摩擦をかけずにメイクに馴染ませる

適量は製品ごとに異なりますが、基本は「適度にのせて馴染ませ、優しくオフする」こと。過剰な量は肌表面に残留し、毛穴詰まりやニキビの原因になります。説明書の目安を確認してみてください。

 

  • 手の温度と摩擦を意識する

手のひらの温度で柔らかく温め、顔全体になじませてから洗い流すのが理想です。力を入れすぎると角質を傷つけ、乾燥や赤みの原因になります。円を描くように優しくのせるイメージで、特に顔の中で骨の裏打ちがない部位(まぶた、目の下のビューティースポットや小鼻まわりなど)は手指からの負荷や摩擦が気づかないうちにかかりやすいので注意が必要です。

 

  • メイクと馴染ませたクレンジングを洗い流す

クレンジングをメイクと馴染ませら、ぬるま湯で十分に洗い流します。残留成分は毛穴の詰まりや肌荒れの原因になるため、すすぎは丁寧に行いましょう。洗い流した後は、化粧水・乳液・クリームといった保湿ステップを迅速に行い、肌の水分を閉じ込めます。

 

クレンジングをお風呂場で行うのは、個人的にあまりお勧めしません。

 

お風呂場は、湿気も高く、濡れた手で肌にオイルベースのクレンジング剤を使用すると、メイク成分を落とす前に乳化が生じ、メイクの汚れが充分に落とせない可能性があります。

 

さらには、お風呂場の鏡は水滴や水アカが多く(ご家庭により差はあると思いますが笑)、照明もやや暗いため、メイクの汚れが肌に残っているかどうかの確認も曖昧になってしまうため、クレンジングをやったつもりになり、その汚れが蓄積して肌荒れの原因になる可能性もあります。

 

以上の理由から、クレンジングは、洗面台で清潔な手指、乾いた手と肌に、個人に合うクレンジング剤を使用することをお勧めします。

 

そして、お風呂までクレンジングを使用して、面倒だからと、シャワーの水圧で落とすのは、たるみの原因になるので要注意です!!

 

まとめ

 

 

*クレンジング選びは、ご自身の肌質やメイクの濃さも選ぶ際の参考にしてみる。

*クレンジングを肌の上で馴染ませるときに摩擦力を発生させない。タオルで顔を拭くときも擦らない。

*クレンジングが持つ洗浄力を生かすためにも、清潔な乾いた手と肌でメイクを落とし、メイクが落ちているかを確認できるようにお風呂場ではなく、洗面台でのクレンジングを推奨。

 

 

今回は、クレンジングについてまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。

 

クレンジングの知識や原理に触れ、ご自身の肌にほぼ毎日使うものとしての興味が湧いてくるのではないでしょうか。

 

健やかな肌の継続のベースになるクレンジング。

スキンケアの始まりでもあるクレンジング。

 

ほぼ毎日行うことであるからこそ、自己流になるところでもあると思うので、これからのクレンジングに何か少しでもプラスになることがあればとても嬉しいです。

この記事を書いた人

松村万由

臨床化粧療法士®︎/歯科医師
九州大学大学院歯学研究院 口腔顎顔面病態学講座 顎顔面腫瘍制御学分野 博士課程修了—口腔外科の臨床を通して、病気によって生じる見た目の変化に悩んでいる方が多い中、まだまだ社会にはその窓口が不足していることを実感し、化粧療法を学び始める。2024年臨床化粧療法士®︎資格取得。見た目における偏見に対する社会問題への取り組みや手術の瘢痕に対するカバーメイクなどの知識や技術を研鑽中。

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